日記#2 『鳴蟬』
みなさん、体調の方はどうですか?僕はそこそこです。
さて。今回は夏によく出現する虫、蟬についての御話でございます。
僕は毎週火曜日と水曜日の二日間、声優なるものを目指すレッスンのために代々木まで通わせていただいております。
駅からレッスンを受ける会場までは少し距離がありまして、当然電車で来ているわけですから自転車などといった便利な移動手段もなく、駅を降りてからは徒歩で現場まで向かうわけでございますが。
毎年この時期になりますと、まるで「待ってました」とばかりに蟬たちが一斉に鳴き出しまして、街道はそれはもう賑やかな様相を呈するのです。
「今年ももうこの季節か」などと、"あっ"という間に過ぎていく時をなんとなく感じながら歩く。
そんな変わりない日常を今日も謳歌していた僕に、それは突然やってまいりました。
前方から勢いよく飛んできた一匹の蟬が、僕の左ふくらはぎにぴたりと止まってみせたのです。
あまりに突然なことに当然驚いたのですが、蟬にとって僕は所詮、羽を休めるためのただの止まり木。当然慮ってなどくれません。
「仕方ない。現場に着くまでの間にまたどこかへ飛んでいくだろう」ということで、僕は仕方なくその蟬と行動を共にすることにいたしました。
それからしばらく、僕は左ふくらはぎに蟬をくっつけた状態で歩いておりました。するとどうでしょう。気付けば、僕はまだ小学生の頃、自分によくついて遊んでくれていた同級生の弟のことを思い出していたのです。
あの頃の僕は今よりもずっと純粋で、僕についてきてくれていた彼もまた、僕以上に純粋な男児でございました。しかしそんな彼も、今は上京してしまい行方すら存じません。
この蟬ももうすぐ僕の脚から離れ、何処かへと羽ばたいていく。
そんなふうな想いが頭をよぎり、僕はなにやら、ほんの少しの寂しさに包まれておりました。
しかしもうすぐ現場に着くというのに、蟬は一向に僕の脚から離れません。さてどうするか。
蟬を脚にくっつけたまま、レッスンに参加するか?それとも彼を払い除けてしまうか?
僕は大きな選択を迫られました。そして思ったのです。過去を振り返ることはない。今、或いは未来を見据えて生きることこそ、僕には必要なことなのだと。
僕は苦渋の思いで、蟬を払い除けました。すると蟬はとても器用に体勢を立て直しながら、ブゥンと小気味よい羽音を響かせながらどこかへと去っていったのでございます。
それからレッスンを終え帰路についたとき、僕はまた蟬達のけたたましい鳴き声を聞きました。
そのときの『鳴蟬』がどこか寂しく聞こえたことを、今日一日、僕はきっと忘れないでしょう。
〜完〜
◎要約
レッスンに行く途中で、前から勢いよく飛んできた蟬が僕の足にピタリと止まりました。「まぁそのうちどっか行くやろ」と思って放置して歩いてたんですけど、なんとなく鬱陶しいしもうすぐレッスン会場なのに一向に蟬が動こうとしなかったので、ビクビクしながらその蟬を払い除けました。道の端でそんなことをしてたので、通行人に見られてちょっと恥ずかしかったです。
〜今日のラッキーアイテム!〜
今日のラッキーアイテムはこちら!
蟬のペンダントです!
今日が終わるまで大体後2時間!みんなもこのラッキーアイテムを急いで手に入れて、今日という1日の締めくくりを最高のものにしましょう!